機動戦士ガンダムUC(ユニコーン) 3巻


機動戦士ガンダムUC〈3〉赤い彗星 (角川コミックス・エース)

機動戦士ガンダムUC〈3〉赤い彗星 (角川コミックス・エース)


 何となく続きを買って読んでみた。


 まあ、基本的な感想は、ルロイさんが以前書かれたのと結構近い感じです。
http://vsbrf91.blog6.fc2.com/blog-entry-924.html


 特にフル・フロンタル関連……っていうか、このキャラの登場で、それ以外の部分の感想を綴る気力を無くしてしまった、というのが正直な気分。
 いくら何でも、これはないだろ……っていう感じに。


 何だろうなぁ、結局これ、やってることが『ガンダムF90』と同レベルなんですよね。A.RチップとC.Aチップで通常の3倍で最後はラストシューティングで、みたいな。
 そりゃ、ガンダム好きな作者として、ファーストガンダムにオマージュ送りたくなる気持ちは分かるよ? けど、安彦良和カトキハジメを引っ張ってきて、宇宙世紀ガンダムの一大プロジェクトとして鳴り物入りで始めて、やる事が『ガンダムF90』と同レベルってどうなのよ。


 シャアのセリフ言わせるのとか楽しいよね。ガンダムセリフを言う快感ってあるから理解はできるけど、実作の中でやったら、そりゃ「ガンダムごっこ」になるしかないでしょうに。
 しかも、福井氏の重厚で濃密な描写力をもってそれをシリアスにやってるから、余計に浮いてるというか、違和感があるというか、ぶっちゃけ乱暴な事を言うなら「馬鹿にしか見えない」。
 一体、種デスでハイネ役の西川に「ザクとは違うのだよ!」って言わせたのと、UCのフル・フロンタルが「見せてもらおうか〜」とか言うのと、どうレベル的に違うわけ?


 というか、フロンタル登場以降、セリフでも地の文でも、シャアシャアうっせぇよ(笑)。何回この名前出てきたんだ。


 ……もちろん、以前『クロスボーンガンダム スカルハート』を評した時にも「最終兵士」に辛い点をつけたように、私自身の嗜好として、ファースト世代の作者がファーストガンダムへのオマージュとしてシナリオをなぞったりするのを嫌う傾向がある事は自覚しています。だからそこは割り引いて読んで欲しいとは思うのですが。


 けど、一方で心配なのは……こうまで「シャアっぽい」キャラを出してしまったら、それを倒すには「アムロ的なもの」をぶつけるしかなくなってしまうんじゃないかと、そんなシナリオ部分での心配もあります。
 これで、主人公バナージが「アムロ」になってフル・フロンタルを倒す話になったら、それはもう本当に、何なんだっていう感想になってしまいますが。逆シャアをやってF91をやってVをやってクロスボーンをやってターンエーもやったこの平成の時代に、まだファーストの焼き直しなんかやるようなら本当に本を壁に叩きつけるよ? 私。


 そんな感じで、どうも福井氏の語り口に乗れない部分が多くてちょっと戸惑い気味です。
 ビスト財団や、「ラプラスの箱」の設定も、なんか宇宙世紀の世界観に馴染まない気がするんですよね。

「その中になにが入っているのか、誰も知らない。でもそれは確かに存在する。政府から引き出される便宜、目に見えない圧力としてね。もっとも代表的なのがアナハイム・エレクトロニクス。軍需と公共事業を一手に独占している上に、裏でネオ・ジオンと取引をしていてもお咎めなし。ビスト財団という後ろ楯がなければ、考えられないことだわ」

 オードリーさんはこう言うんだけど、私これ読んで、すごい嫌な気分になったんだな。
 思うんですけど……こういう、変な陰謀論陰謀史観みたいなのを持ち込まずに世界観を作るのが宇宙世紀ガンダムの魅力的なところだったし、もっと言えば美徳だったと思うんですよね。
 だってそうでしょ、これ、ユダヤ陰謀説みたいなものじゃん(笑)。
 アナハイムが軍需を一手に引き受けてたのは、我々の世界でマイクロソフトがパソコンのOSをほぼ独占してる状態なのと変わらない理屈でそうなってたんだと思いますよ。少なくとも、これまでのガンダム作品はそのように描写してたはずだと思うし。
 アムロ・レイはこの問題を「それが企業ってものだもんな」の一言で流してたはずです。それが宇宙世紀のリアリズムだったはずで、ビスト財団なんて設定が本当に必要なのかどうか。
 こんな陰謀史観を入れたら、途端につまらなくなってしまうと思うんですよ。


 なんだかなぁ。
 とにかく、宇宙世紀で作品を作る以上は、個人的には「より世界観を広げる」「深める」ような作品にしてほしかったんで。さらにこのユニコーンから、外伝やスピンアウトが現れるような。
 そのためにも、新しいことをして欲しかったんですけどね。ここまで、3巻までのユニコーンからは、なんか収縮していくようなベクトルしか感じない気がします。


 あ、でも、一つだけ良いなと思ったところがありました。
 ユニコーンガンダムのシールドです。このシールドには小型のIフィールドが仕込まれているので、ビームも防げるのだそうです。これは新しいギミックとして、素朴に「おっ、良いじゃん」と思いました。
 ビームコーティングされたシールドというのと、F91以降のビームシールドの間を埋める技術としても非常に面白いと思います。妄想が広がりますw ビームシールドが普及するまでの一時期、一部の高性能機にはこのタイプのシールドがスタンダードだったんじゃないかとかね(笑)。


 そんな感じ。んー、まあ一応、続きも読んでみるか。