東方儚月抄 コミック版最終話


 これにて儚月抄はおおよその行程を終了。あとは神主小説がもう1話残ってるだけ。
 4コマの方はとりあえずおいておきます。単行本は買うけど。


 とりあえず、レミリア様のマイブームがころっと変わったようです。もう何て言うか……大物だなぁ(遠い目
 とにかく楽しめるモノが何かあれば良いんですな。500年の長生もこれなら退屈しなさそう。羨ましい限り。
 そして、若干照れ気味のパチュリーにころっとやられる、相変わらず単純なパチュリスト私。


 一方、紫と幽々子の会話で、ようやく今回の二人の真意が判明したわけですが。
 あれだけの思わせぶりをして、一体なにを持って来たのかといえば……。
 いやさ、幻想郷屈指の実力者、八雲紫西行寺幽々子がタッグを組んでですよ、「月面戦争」なんて大仰な看板かけて、あれだけ大事やってさ。お前らやってること三月精と変わんねぇじゃねーか(笑)。
 もう何て言うか……拍子ぬけしたと同時に、毒気も抜かれてしまって、苦笑しか浮かんで来ませんでした。
 大山鳴動して鼠一匹。うーん、これで良いのかなぁw


 で、場面変わって紅魔館。図書館にプールが新設されてました。パチュリーさんの魔法マジ便利。ていうか魔法図書館フレキシブル過ぎる(笑)。
 で、「今は冬だというのに水遊びはおかしいって!」といかにも正当な抗議をしているように見える魔理沙さんと霊夢さんですが、ならなんでお前ら水着まで用意して泳いでるんだ(笑)。
 本当にお調子者なんだから。まあそこが美徳なんですが。


 で、最後は紫が戦利品のお酒を持ち込んで、毎度おなじみの酒盛りでお開きと。


 ……え、あれ、永遠亭は!?
 輝夜さんは見せ場なしの良いとこ無しですか、そうですか。



 さて、2、3ヶ月後のキャラ☆メルを待つのもかったるいので、先に儚月抄の総評をしてしまいます。


 んー、正直、かなりの読者は拍子ぬけして、けっこう辛い点をつけるんだろうなぁと思います。まあ実際、辛い点つけられても仕方ないとは思うよ。最初にかなり期待値あげて始めたわけですし。第一話を読めば、誰でも華麗で派手なスペルカード戦を中心にした話だと思ったでしょうし。その当初の期待は、結局ほぼ満たされなかったと言うべきでしょう。
 また、既存の東方の世界観を知らない読者置いてけぼりだったのもそう。こういう話にするんなら、もう少し新規読者へのハードル下げる工夫があっても良かったよね。


 このブログのアクセス解析とかも時々見てるんですが、「儚月抄 失敗作」で検索してくる人もけっこういます。やっぱり、特に依姫とのスペルカード戦が始まってから、展開に不満を持つ人も多かったんでしょうね。私の中にも消化不良感はありましたし。


 その上で、私個人の評価はというと……。
 実はそんなに悪くない。
 なにより、紅魔館ロケットが飛ぶまでは、本当にわくわくしました。子供のころ、童話の世界でしか出会えなかった魔法を、久しぶりに見たような気分がして、すごく良かった。


 私自身も、後半のスペルカード戦に落胆はしました。そこは、もう少しスペルカード、バトル描写が出来る人に絵を描いて欲しかった部分はあるし。
 しかしその辺の消化不良感も、今回の落ちを見せられて、バカバカしさと共に抜け落ちてしまったというか。わりと正直な感想です。結局、第一話の「始めるわ、もっとも美しい戦争、月面戦争を」というゆかりんの宣言から、もう壮大なブラフだったって事ですからね。大事件が起こるぞ、という挙動自体が壮大な引っかけ、罠だったわけですから。


 その上で、この最終話もちょっとした深読みは出来ます。
 紫との会話で、幽々子は「第二次月面戦争の無血の勝利」と言っています。
 ここでわざわざ「無血の」と言っている意味は何でしょう? 無論、東方キャラクターたちは、深い意味もなく意味深な言葉を会話に散りばめる連中ですからこの言葉も単なるその場の勢いだけかもしれません。
 けど、そうでないかもしれない。


 ここで「無血の」とわざわざ付け加えているのは、つまり「第一次月面戦争は無血ではなかった」と解釈する事もできます。
 結局儚月抄を通して、第一次月面戦争がどんな戦いだったのかは詳しく語られていませんが、コミック第十三話の時点で月の民たちが初めてスペルカードに触れた事から、それ以前に行われた「第一次月面戦争」が流血を、場合によっては犠牲を伴っていた可能性はあり得るかと思えます。詳細は私の第十三話感想に。
http://d.hatena.ne.jp/zsphere/20080710/1215636549


 そういう意味では、依姫に刀を向けられていた霊夢魔理沙は、もしかしたら最大のピンチを迎えていたのかも知れません。


 もし、私の予想が当たっているなら、第二次月面戦争がさしたる荒事もなく、「無血で」拍子ぬけするように終わった事は、この二人にとって大きな意味があるのかも知れません。
 盗んできたものは消耗品で、今さら綿月姉妹も取り返しに来るようなものでもありませんでした。悲惨な荒事になるような憂いのないまま、小さな意趣返しの勝利を手にしたわけです。


 歴代の東方作品において、「酒」は融和のためのアイテムでした。どんな事件の後も、結局は霊夢たちと各作品のボスたちが酒盛りをして終わります。ある意味で、歴代東方でもっとも重要なアイテムとも言えるでしょう。
 東方作品の中で、その重要なアイテムである「酒」を取り上げる力を持っているのは、八雲紫だけです(「萃夢想」の紫ストーリーモードと、今回の儚月抄)。
 この儚月抄において、綿月姉妹はボスクラスの存在でありながら、霊夢たちと酒宴をして仲直りする機会を奪われています(あの比那名居天子ですら霊夢たちと和解できたのに!)。そればかりか、融和のためのアイテムである「酒」そのものも奪われてしまったわけです。
 まあ、正確には小説版儚月抄の最終話前編で、霊夢綿月豊姫が酒を飲んでいますが(ちなみに、挿絵では「茶」の文字が。絵師さんに発注する段階ではお茶だったのかも知れません)、関係者全員と仲直りをする場を与えられていません。


 武力を行使する事に躊躇がなかった綿月姉妹は、融和の可能性(=酒)を奪われるという形で、地上の妖怪たちから手痛いしっぺ返しを食らった――今回の儚月抄を、そのように読み替える事があるいは出来るのかも知れません。
 もしそうなら、派手な「荒事」を期待していた読者も、最後の拍子抜けの落ちを見せられて綿月姉妹と一緒に「ぎゃふん」と言う立場なのかも、知れません。




 そんなところで。
 あ、ちなみに今回のREXには、「東方星蓮船」の体験版もついていました。
 そちらのプレイ感想は、後日改めてさせていただきたいと思います。
 まあでも先に一言だけ言っておくなら。


 雲山さんマジパねぇっす。