機動戦士ガンダムAGE解説の前に


 これから、『機動戦士ガンダムAGE』の一話ごとの解説や個人的読解などを、暇を見つけて書いていきたいと思います。
 始める以上は出来るだけ最後まで行くつもりではありますが、根っからの三日坊主な性格なので、もし途中で力尽きて更新が途切れるようになったら、「迂闊なやつめ」と鼻で笑ってやってください。


 さて。
 ご存知の方はご存知の通り、『ガンダムAGE』は歴代ガンダムシリーズで最低の視聴率を叩き出し、世間的な評判も芳しくない……という言い方では少々足りないくらいの低評価を受けている作品です。
 これにはきちんと理由があり、構成的な失敗や細かい演出上の不出来な部分は当記事でも逐次述べていくつもりです。しかし一方で、歴代ガンダムを見渡しても、決して遜色ないくらいの意欲的なテーマを盛り込んだ作品でもあったと筆者私の目には映りました。そういった観点からの作品の楽しみ方を提示していければ、と願いながら以降この記事を書いていきます。
 もし、これからこの作品を見てみようかという方がおられるようなら、そして「どうせ見るなら楽しんで見たい」と思われている方がおられるならば、他の数多の感想サイトに加えて、当記事も片手間に覗いていただければ幸いです。


 最初に、ガンダムAGEを楽しむためのヒントを一つ。
 この作品は冒頭、歴代ガンダムのリアリズムとはかけ離れた、子供向けアニメ的な要素や展開が多発して来ます。わずか14歳の少年が軍用兵器を超えるスーパーマシン・ガンダムを完成させたという話からして、歴代のガンダムのリアリズムから見れば異質です。
 実際のところ、私もたまたま本放送中、第二話を見る機会があって、その段階で「これは子供向け番組で、ガンダムとはついているけれど自分がわざわざ見るほどの作品ではあるまい」と判断し、半年以上関心も向けていませんでした。


 初代『機動戦士ガンダム』が他のアニメ作品と一線を画し、これだけの長寿シリーズになり得たのは、「子供だまし」から脱却しようという当時のスタッフの気概があったからでした。組織や兵站を考慮した、「戦場のリアル」を作品に取り込んでいく事を目指した、その構想が画期的だったのであり、いわばガンダムの原点です。
 歴代のガンダム作品に思い入れがある方ほど、従ってガンダムAGE冒頭の「子供向けアニメの雰囲気」に違和感や、場合によっては拒否感を持たれる方もいるかも知れません。


 もし、話数通りに視聴する気になれないなと感じた方がおられましたら、騙されたと思って、第二世代の「アセム編」、第16話からの数話を試しに見てみてください。
 第1話に比べると、はるかに違和感が少なく、普通に見れる事に気づくのではないかと思います。
 フリット・アスノの息子であるアセム・アスノを主人公にした第16話からの物語では、主人公のアセムは機械に強いといっても部活のロボット大会で活躍する程度に描かれています。また学校卒業後、普通に軍に志願して、普通に軍人になります。
 宇宙世紀ガンダムシリーズと比べても、そんなに極端に違和感を感じない程度に、作中が「戦争のリアル」を描くように、いつの間にかシフトしています。


 人気低迷のためのテコ入れでしょうか? 私見では否です。これは第1話から最終話までを貫く、明らかに最初から仕組まれたプロットです。かなり意欲的な。
 最終的にこのプロット、作品の「ねらい」を可能な限り炙り出す事が、本記事の最終目標であります。


 ……さて、ゴタクはこの辺にして、実際に各話解説を始めていきましょう。


 以下、記事中ではストーリーのネタバレを含みます。AGE本放送未見の方は、まずはアニメ本編を見て、その後当記事をお読みください。必要とあれば、それからもう一度再見いただければ。


 それでは、始めましょう。


『機動戦士ガンダムAGE』各話解説目次