機動戦士ガンダムAGE 第一話「救世主ガンダム」


     ▼あらすじ


 「UE(アンノウン・エネミー)」と呼ばれる未知の敵による襲撃が頻発するAG115年。
 子供の頃、母親をUEに殺された少年フリットは、形見となった「AGEデバイス」に記録されていた設計図を基に、モビルスーツガンダム」を完成させていた。
 そしてついにフリットたちの住むコロニー「ノーラ」にもUEの襲撃の手が伸びる。フリットガンダムを起動させ、史上初めてUEを撃破する事に成功したのだった。




      ▼見どころ(ストーリー)


 三世代に渡る物語の最初の世代。フリット・アスノが乗るガンダムは、名称をガンダムAGE−1と言います。
 一目見ればわかる通り、初代ガンダムを意識したデザインです。特に、大河原邦男氏の描いた、いわゆる「ガワラ立ち」のガンダム画に顔つきが非常によく似ています。



 堂々たるガワラ顔。


 であれば、物語もファーストガンダムを意識しているのかと思いきや、その内実はかなり違います。
 登場する要素は、まるでガンダム以前の子供向けロボットアニメに先祖がえりしたかのような、テンプレートなものばかりです。のっけから食パンくわえつつ朝の支度をする主人公。幼馴染の少女に、ちんちくりんなデフォルメ体型の友人。そして主人公をサポートする「博士」属性のキャラクター、バルガスなど。



 オリジナルセンスあふれるメガネをかけたバルガス氏。



 さらに、初代ガンダムの画期的なところであった、敵のメカに「ただの兵士」が乗っている、それを撃破する事は人殺しになってしまう事を意味するという、「戦場のリアル」が第一話では描かれません。敵はUEと呼ばれる、一目見た限りどうにも軍用兵器には見えない存在です。



 翼の生えたモンスターのような外見のUE。
 いみじくもフリット本人が、この第一話で「ただ破壊を繰り返す、ヤツらはモンスターなんだ!」と言っているように、冒頭で登場する敵は、エイリアンとかそういったものを連想させる存在なのでした。
 ゲームのスパロボをやったことのある読者の方なら、マジンガーZとかの敵として出てくる「機械獣」といった存在に近い、といえばわかりやすいでしょうか。



 そして何より。歴代シリーズにおいて、一部例外を除いて、ガンダムは「救世主」ではありませんでした(一部例外についてはお察しください)。
 初代ガンダムにおいて、RX−7ガンダムはただの「兵器」であり、どれほど高性能だろうと一機で戦争を終わらせたりする事は出来ませんでした。そこが一番画期的なところだったと言っても良い。アムロ・レイの乗ったガンダムは、敵組織の親玉であるギレン・ザビを倒す事もできず、連邦とジオンの休戦協定とも直接関わりませんでした。そうした意味を持つ名前である「ガンダム」が、この第一話で(そしてこの後の話でも)しつこいくらい繰り返し「伝説の救世主」と呼ばれ続ける事は、熱心なファンであればあるほど、強烈な違和感であろうと思います。



 ちょっと印象派な「伝説の救世主ガンダム



 以上つらつら見てきましたが、この時代がかった道具立ての数々は、一体なんだと思われますか?
 仮に子供向けに作るにしても、最近の傾向に合わせるならもっと派手な要素を散らすこともできたハズです。上記で指摘した要素はいずれも、単に子供向けというよりは、「ガンダム以前のロボットアニメに特徴的な要素」です。マジンガーZとか、ゲッターロボとか、そういう時代に多用された記号たちです。


 どうして第一話をこんな話にしたのか?
 そんな問題を提示して、次回に続くことにします。



      ▼その他(ツッコミ所とか)


 のちのアセム編、キオ編を見てからフリット編を見返すと、フリットさんのアレな性格がこの頃から垣間見えて苦笑を禁じ得なかったりするわけですが。
 たとえば、



 ロマンチックなデートスポットで、ガールフレンド相手にガンダムの話しかしないフリットさん。
 エミリーの「いつも話してくれる、絵の中の救世主、だね」の口ぶりから察するに、フリットさんいつもこんな話ばかりしているようです。
 この辺、非モテ街道まっしぐらな性格なように思うのですが、エミリーがフリットのどの辺に思い入れてるのか、それが分かるエピソードなんかは見てみたかった気もします……。




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