機動戦士ガンダムAGE 第13話「宇宙要塞アンバット」

     ▼あらすじ


 ついに、UEの拠点である宇宙要塞アンバットへ最後の決戦を仕掛けるディーヴァ艦隊。グルーデックの命により、ディーヴァはAGEシステムの弾き出した新たな強襲揚陸形態へ変形を遂げる。
 激戦の末、ついにディーヴァはフォトンブラスターキャノンの射程にUEの巨大戦艦を捉え、撃破に成功。分離した艦の一部がディーヴァに特攻を仕掛けるものの、マッドーナ率いるシャルドール部隊がこれを排除。ついにグルーデックたちはアンバットへの上陸を目指して進撃するのだった。


      ▼見どころ


   ▽ディーヴァの変形


 第11話、ミンスリーにて行われたディーヴァの大改造の全貌がこの回で明らかになります。
 今までブリッジから見て90度傾いた向きになっていたMSカタパルトがブリッジと同じ向きへと変わり、左右にウイングが展開され、さらにブリッジも前方へ大きくせり出してきます。
 どんな形になったかというと、





 どこかで見たような……。


 言うまでもなく、これはファーストガンダムホワイトベースの形になったわけなのでした。



 上からの良いアングルのSS撮るの断念(ぇ


 おまけに、この変形をアンバットから観察していたギーラ・ゾイが、わざわざセリフで「まるで木馬だな」と示唆して見せる徹底ぶりです。


 というわけでこれも歴代ガンダムからの引用だったのですが、例によってただの引用、オマージュ、パクリというわけではありません。ただ真似したいなら、『ガンダムSEED』のように最初からホワイトベースを思わせる形の艦を出せば良いからです。これは、このタイミングで「変形」してホワイトベースの形になる、という事に意味があると見るべきでしょう。


 このタイミング、とは、では何か。


 ファーデーン、ミンスリーとエピソードを重ねる中で、「昔の子供向けロボットアニメ」に即していた物語のリアリズムが段々とガンダムに近づいて来ているのだ、と私は何度か書きました。
 ザラムとエウバが、どこかコミカルさを残すいさかいからUE相手の「本物の戦争」へ移行し、そしてこの「宇宙要塞アンバット」の回でついにギーラ・ゾイをはじめとするUE側の人間が顔を出しました。
 得体のしれないエイリアン退治という展開から徐々に様変わりしてきた状況が、ついに「人間対人間の戦争」に移行しきったわけです。
 そして、ディーヴァが「ホワイトベース」になる事で、ここではついにガンダムAGE』の作中リアリズムが初代ガンダムに追いついたのだと、その瞬間を告げるイベントだったのだと私は思います。


 もちろん、初代ガンダムに追いついたといっても、実際に、本当に追いついているのかどうかの評価はまだ別です。ガンダムAGE−1は相変わらずガンダムシュピーゲルっぽい忍者装備ですし、矛盾点やツッコミ所も多々ある事と思います。
 それでも、あの力の入ったディーヴァ変形シーンは、物語を通して「ガンダム以前」から語り起こされてきたアニメの歴史追想が、ついにファーストガンダムの段階に突入したという宣言だったのではないでしょうか。


 そして、そのような段階を経た上で、ついに最終決戦が始まる事になるのでした。



   ▽最終決戦開始


 この回、フリットのAGE1スパローにも見せ場がありました。
 圧倒的な数で押してくるUEの防衛線を破って敵戦艦をディーヴァのフォトンブラスターキャノンの射程内におさめるべく、敵のど真ん中に突っ込んでの状況打開を図ります。



 こんな状態に。


 一見無謀なようですが、まともな射撃武器のないスパロー装備ではむしろ一番戦いやすい場面かも知れません。UE側は味方への誤射の恐れがあるためうかつにビームを撃てませんし、結果的にスパローの得意な格闘戦で対処せざるを得なくなる形。とはいえ、普通にやり合えばやはり多勢に無勢ですから、ここから状況打開できたのはフリットの能力という事にもなるのでしょう。



 そして、MS隊の活躍により、ディーヴァがついに敵UE艦を射程に捕らえます。満を持して、切り札フォトンブラスターキャノンが放たれるのでした。



 AGEシステムの導き出したディーヴァの切り札。


 このフォトンブラスターという武器は、アセム編、キオ編でも「ここぞ」という戦局を左右する場面で切り札として放たれます。そういう意味で、シリーズ全体を通して重要なシーンです。
 実際、前の話で連邦軍の軍艦の主砲がUE艦の装甲を貫通出来ていなかったことを思い返すと、UE艦はおろかその背後のアンバットまで突き抜けてしまう様子からは、桁違い、というより別格の兵器といった描写になっています。
 これは脚本を分かりやすくする工夫にもなっているのだと思います。「フォトンブラスターを放てるかどうか」が勝つか負けるかに直結していれば、その一点を描くだけで戦いの趨勢を分かりやすく伝える事ができるからです。


 ……もっとも、こうした点もまたAGEの評価を分けるところかなとも思います。初代ガンダムが、「Sフィールドはドロスで支えられる」「Nフィールドの守りが手薄い」といった細かな戦況を視聴者に見せていく事で、「決戦」の雰囲気を高めていたのとは逆の志向性だからです。
 どんなに高性能でも、一機で戦争を終わらせる事はできない「ただの一兵器」ファーストガンダムと、一機で戦争を終わらせようとする「救世主」ガンダムAGEとの差は、こうした演出・設定の違いとして表面化してくるのでした。


 閑話休題
 フォトンブラスターによって撃沈させられたUEの戦艦ですが、その一部が離脱し、ディーヴァへ特攻をかけてきます。回避も間に合わない絶体絶命の危機。



 UEが初めて捨て身になった瞬間でしょうか


 これを止めるために、エウバのリーダー、ラクト・エルファメルがこちらも特攻をかけようとします。ドン・ボヤージの後を追うように……しかし、さらに重なる悲劇、というフラグをへし折る男が現れます。不可能を可能にする、そう……



 ま た お 前 か 。
 すごいぞ僕らのマッドーナ。パイロットも出来るなんて聞いてないぞ。専用のパーソナルカラーで彩られたシャルドールで、ロックオン・ストラトスも真っ青の狙撃を披露。美味しい所を全部持っていきました。



 狙い撃つぜ(違


 まぁ、どのみち、スパローでは特攻する敵艦を止められなかったのでしょうけどね。


 ともあれ、連邦正規軍のいない戦場で、UEを相手にフリットたちは優勢に戦いを進めていたのでした。しかしその様子を見て、



 不敵な笑みを浮かべる魔少年でした。
 次回、アンバット攻略戦は佳境を迎えます。
 スローペースですが、焦らずゆっくりと物語を追っていきたいと思います。
 そんなわけで、今回はここまで。



『機動戦士ガンダムAGE』各話解説目次