小説版『機動戦士ガンダムAGE』第2巻



 引き続きのんびりと読んでおりました。内容はフリット編の最後まで。



 相変わらず、心憎いくらいアニメ版の矛盾を訂正・回避する周到ぶりが目に付きました。私が「各話解説」記事で触れたような矛盾点はほぼすべて修正されたり、フォローされたりしています。
 またそれだけではなく、たとえばアニメ版と違ってミンスリーでグルーデックたちがバーミングス邸に出向いている間、ディーヴァの艦長代行をミレースが行っていた、とすることで、アセム編でミレースが艦長を務める事の前ふりをやっておいたりとか。もう本当に、いじらしいくらい細部にまで配慮のきいた辻褄合わせぶりです(笑)。


 もっとも、単にそれだけの事であれば、私はこの小説版はそんなに高く評価していなかったと思います。いくら矛盾が解決されていても、それとは別に物語の深さという問題があるからで。この小説版の著者の方は恐らくすごく頭のいい方なのだろうと思うのですが、それだけにキオ編以降で効いてくるような伏線部分も、全部地の文で説明してしまっているところもあったりして。分かりやすい反面、「言わぬが花」であった部分もかなり減ってしまっているんですね。
 ……まぁ、アニメ版AGEは「言わぬ」部分が多すぎて、そこに花がある事を分かってもらえなかった側面が多分にあるため、痛し痒しではあるのですが。
 いずれにせよ、文章で綴る小説というジャンルは、すべてを語りつくしてしまう事が出来るため、往々にして説明し過ぎになりやすいわけです。
 正直、デシルを撃破するくらいまで、私の小説版への評価は少し下り坂なカーブを描いていたのですが。


 ……はい、ギーラ・ゾイとの最終決戦での展開により、一気に青天井に評価が高まりました。ここにきてタイタスの見せ場が!(笑) まさかのタイタス新技乱舞で感動するやら笑えるやらで、細かい理屈がどうでもよくなってしまったわけです。いや、これはやられたw


 とりあえず、未読の方のためにここには書きませんが。ともかく、AGEシステムさんプロレスに詳しすぎるだろと(笑)。
 ともかく、理詰めの辻褄合わせだけでなく、ここぞという場面でリミッター解除する呼吸も備えていた、なかなか侮れない著者さんでした。これは改めて、AGEファンには心から勧められる作品だと再認識いたしました。


 うん、一応考察サイトのふりをしてみますとですね。
 明らかに、普通にシステムを組み上げただけだったら、こんなプロレス技が次々繰り出されるような事になるハズがないわけなので。AGEシステム開発の中枢に関わった何者かが、旧世紀の日本で行われていた格闘技・プロレスのデータをシステムに取り込ませたのではないかと思います。
 そうすると、最も怪しい容疑者は……バルガス……!
 恐らく、バルガスさんは密かに、「幻の旧世紀格闘技・ジャパニーズプロレス大全集」みたいな映像集のデータを持っていて、夜な夜なビールとか飲みながら見入ってはヒートアップしていたのに違いありません。ついでにそんな祖父の姿をエミリーさんが呆れ顔で眺めていたに違いないのです(笑)。


 そんなわけで(どんなわけだ
 ともかく、この最終決戦部分を読むためだけでも買う価値はあると思います。いやいや、楽しませてもらえるもので。
 引き続きアセム編以降も読んでいきたいと思います。