小説版ガンダムAGE 第3巻「セカンド・エイジ」



 書店の店頭で見つけられなくて焦った。ちょっと見ないうちにじわじわと本屋から消えて行ってました。仕方ないから角川のウェブページで直接注文する憂き目にあいましたよ。


 まぁそれはともかく、相変わらず原作の足りない所を、いじらしいくらいの周到さで補っていく小説版AGEのアセム編、堪能しました。


 ロマリーにオペレーター技能を学生時代から付与する事で、主人公アセムと自然に絡むことができるという工夫や、学園パートには水着回を入れたりするサービス精神など、実にまっとうな本編の改善案で、物語に登場する様々な要素を上手く一つの話の流れに落とし込む手際が非常に良く。うん、アニメ版のシリーズ構成担当者は、小説版作者の爪の垢を10回くらい飲んでから仕事に取り掛かるべきだったよな、とは思いました。
 また、アニメ版のアセム編の内容を、ギリギリまで削りに削って文庫本一冊にあらかた納めてしまった力量にも脱帽するしか。


 そんなわけで、やはり全体の完成度としては目を見張るレベルであり、これは最大限の賛辞を贈らざるを得ない仕事ぶりだと思うのですが。
 しかし。
 アセム・アスノが、Xラウンダーになれない自分というコンプレックスを克服する、その答えの部分はアニメ版に比べて弱いと思います。もちろんこの方が分かりやすくはあるんですけど……アニメ版が歴代ガンダムの「ニュータイプ問題」を非常に丁寧に読み解いて、一本の作品の中で再構築して見せたのに比べると、ちょっと物足りない感じでした。
 これについては、いずれ各話解説記事の方で述べると思いますが、「スーパーパイロット」とは何を意味していて、なんでそれがXラウンダーに対抗できるのかというのは、アセム編全体を貫くテーマなのでやはり重く扱うのが本当なのかなと思わなくもなかったです。
 もっとも、それはそれでクドクドしくなりそうなので、エンタメとしては小説版のこれが正解なのかも知れませんが。


 まぁ、いずれにせよこれは、押さえるべき点を押さえ、思い切りやるべきところでは思い切りアクセルを踏んだ、正当で丁寧なエンタメ作品になっていると思います。実にGJな出来でした。


 最近書店では見かけなくなった小説版AGEですが、私は角川に直接Web発注して入手済みなのでこれから続きを読みます。
 もし読んでみようかと思われる方がいましたら、急いだ方がよいのかも。