ゲーテ全集第14巻 自然科学論


新装版・ゲーテ全集14

新装版・ゲーテ全集14


 たまに直観というか、気まぐれというかで、「ここはいつもより深く掘っておこう」という気になる場合がありまして。私にとってゲーテはそういう存在だったらしく。主要な戯曲・小説作品だけでなく、『形態学』や『色彩論』も読んでおこうという気になったのでした。まぁ、割と名前はよく耳にしてましたし。また、そのために植物用語の本なんかも予習で読んだりしていたのでした。


 予習をあらかじめしておいたのは大正解で、細かな植物用語や、植物の生長に関する記述で立ち止まったり戸惑ったりするのを大幅に減らせたと思います。
 そして内容については、非常に刺激的で楽しかったのでした。おそらくゲーテの立ち位置のせいなのだろうなと思うわけですが、生物系の学術の最先端動向も把握しつつ、しかし本人は学術研究一本の専門家ではないので、プロの慎重さとアマの大胆さが上手く噛み合ってるような、そんなイメージでした。
 形態学の考え方も、「芽が花や枝になる途中」のような、分類しようとすると邪魔になる中間状態にこそ注目するという辺りに、素朴な感心が走ったり。そこはそれ、やはり人間たるもの、そういう半端な状態は無視しがちなものですし。綿密な観察からこうした構想に行き着いたらしいことにも、シンプルな驚きがありました。アマチュアセミプロがハンドメイドで「科学」的成果に到達できた、最後の時代なのかもな、という感じです。


 そして、例によって読書の楽しさの一つですが、想像していなかったところで自分の関心が急に高まるというところがあって。それが『色彩論』のパートだったのでした。今までの自分の関心のレパートリーに無かったところに関心を喚起してくれた。
 ゲーテの色彩論は、今日的に言えば認知心理学、物理学と光学、そして化学を「色」をテーマに横断的に辿って行くような内容で、正にその横断的なところがスリリングでした。明るい光源を見た後に眼を閉じるとまぶたの裏にチカチカ映る残像も、染料などが出す化学的な色も、「色」という一つの言葉で並べる感覚は、逆に今の時代だと出ない気がする。
 また、色盲なんかもきっちり押さえていて、さすがなだと感心したり。
 他にもいろんなインスピレーションが次々得られる、エキサイティングな読書でした。リトマス試験紙の色で酸性アルカリ性が分かるのは小学校時代の理科からお馴染み過ぎて深く考えた事なかったですけど、ゲーテの記述を読みながら、そういえば以前NHKで見た番組で、大島紬アルカリ性の泥に布を浸すことで色を定着させるとかいう話をしてたのを思い出し……自分が思ってるより、酸性アルカリ性と色って関係が深いのか? と思わされて若干慌てたりとか。この辺については時間があったらもう少し追究してみたいですねぇ(いつになるやら


 そんな感じで、相変わらずの寄り道読書でしたが、収穫は上々、楽しい時間でございました。
 そしてさらに、ゲーテ