法窓夜話/続法窓夜話


法窓夜話 (岩波文庫)

法窓夜話 (岩波文庫)


 人文系にはそれなりに興味を示してきましたけど、一方で法律などの社会科学分野にはあまり手を出してきませんでした。
 とはいえ、Twitterでいろんな話題を巡ったりそれらについて意見表明したりしてると、けっこう法律関連の素養を求められる事が多くて。気にはなっていたのですよね。
 というわけで、そうした関心を広げる端緒として、こんな本を手に取ってみたのでした。大正時代に出された、法に関する世界史上のエピソードやトピックを紹介したコラム集的なもの。著者は日本の民法起草にも関わった方だそうで。


 コラム集と言いつつ、その骨太な志に読んでいて気圧されるほどで、学者たるものたとえ時の権力に脅かされようと筋を曲げるべきではないとか、理なきところに法律なしとか、そういった強固な意識にとにかく感動しながら読んだという感じです。こういう人が日本の民法成立に関わったんだなと思うと、なかなか感慨深い。


 そしてまた、古今東西の様々な成文法・慣習法に対する幅広い学識もとんでもなくて、ひたすら圧倒されながら読み進めました。紀元前バビロニアの法律から旧約聖書十戒から当時最新の法律関連の話まで。そして視野が広いゆえに、古文献にある「弓矢を放って届いた距離をもって境界線を決める」エピソードと、当時の国際法における艦砲の飛距離をもって領海を定めたことの相似を指摘したりできる辺りも読んでいて愉快で。


 また、日本の明治以降の法整備に関わったからこそ書ける様々な経緯とか裏話、指摘なんかも実に面白かったです。大津事件の判決に対する司法の判断に関しても、時の権力が三権分立を侵すことを退けた判断を是とすると同時に、そのような事態を法律制定時点で想定していなかったゆえの問題でもあったと指摘する辺りは、本書で言われなければ多分一生持てなかった視点だったかなと思ったり。
 一つ一つのトピックは比較的短いので読みやすく、それでいて重厚な読み味をもたらしてくれた良い本でした。いずれ日本の法の歴史みたいなのも1冊まとまったのを読んでみたいなぁと、例によってとめどなく拡散する関心を書き散らしつつ。
 さて次。